HOME>>大阪都構想解説
「大阪都」―それは、橋下大阪府知事と大阪維新の会が進める構想であり、指定都市である大阪市と堺市を廃止し、それらの権限や財源のうち重要な部分を大阪都=府 が吸い上げ、また基礎的な部分を公選区長・議会を備えた小さな特別区が引き受けるという計画です。実現すると、大阪や堺は、先進国ではまれな、自前の強い自治体政府を持てない大都市になるでしょう。(パリ、ミラノ、ミュンヘン、シカゴ、トロント、台北など、人口100〜300万人の大都市自治体は国際標準といってよい。)その論争の結果は、長期にわたって、大阪の地方自治や諸政策のあり方を左右するでしょう。個別政策とは違い、いったん大阪市と堺市を廃止・分割してしまうとその復元は至難で、それだけに十分な検討が必要です。
ところが、世論調査では、大阪都構想への賛成は反対をある程度上回りますが、同時に「説明不足だ」という意見がたいへん多いのです。府民の多くが、大阪都構想を理解しないままムードで支持し、それによって伝統ある2つの大都市自治体が消滅してしまうのでは、将来に悔いが残るでしょう。
このような現状は、「大阪都」が複雑な問題なのに、推進派がそのメリットや効果だけを誇張して、一方的に宣伝しているためではないでしょうか。もちろん、デメリットや対案について、十分な情報発信をしていると必ずしもいえない反対派にも、責任の一端はあるでしょう。
(2011年3月の東日本大地震が起こるまで、原子力発電の必要性や安全性ばかり聞かされてきたのと似た状況が、大阪都構想をめぐっても存在するのではないか!)
今、大阪府民や関係者が、大阪都のメリット・必要性の程度、さらにデメリット、 代替案について、幅広くていねいに考えられるような情報提供や議論が、求められています。
このコーナーは、大阪都構想をめぐる議論に多少ともバランスと知性を確保したいという願いから、「対抗情報」を集めて発信するために、設けられました。結果として大阪都に批判的な情報が多いのですが、それは感情的・イデオロギー的な批判ではなく、あくまでも事実やデータ、論理的推論にもとづいた検討の結果です。
そういう意味で、このコーナーの情報が、大阪都反対派の方々だけでなく、大阪都構想を冷静に考えようとする方(マスコミを含む)や、推進派の方にも、参考にし活用していただけるよう、祈っております。
なお、このサイトへのリンクは、自由に設定していただくようお願いします。
大阪市政調査会会長 澤井 勝
「大阪都構想」(大阪・堺市の廃止構想)を争点とする知事・市長選挙(2011年11月)を受けて
――「一定の接戦」という結果を踏まえ、大阪都は、マイナス面を含む説明が必要――
立命館大学教員 村上 弘
*今回の選挙結果と大阪都の行方について、政治学、地方自治論の視点からコメントします。よろしければ、参考にされ、また趣旨を損なわない形で引用してください。
2011年11月の大阪の知事・市長選挙で、大阪都構想を掲げる大阪維新の会がともに勝利し、有権者の多数の期待を示しました。ただし、維新の会が「圧勝」し都構想が「承認」されたという報道が見られますが、これは誇張だと思います。
(1)2つの選挙で、維新の会の票と反対派の票(知事選挙は倉田・梅田候補の合計)の比率は、ともに6割弱対4割強になっています。「圧勝」ではありません。(野球やサッカーで6対4の試合を、圧勝と言いますか?)「民意」は6割と4割に分かれたと理解すべきです。橋下氏のように、6割の方だけを民意と認識するのは、1票の平等の原理を無視するものです。
また、「圧勝」という報道は、マスコミが自ら自由な報道・議論を制約する機能があります。つまり、大阪都構想は圧倒的に支持されていて、ほぼ既定事実だという前提で報道することになってしまいます。
(2)大阪都構想については、依然として情報が単純化され一方的に流されています。つまり維新の会が、プラスの情報を宣伝し、マイナス面や不利な情報(例:大阪市や堺市の廃止構想であること、大阪市や堺市の貴重な政策力、海外事例)に触れず、それにマスコミもかなり従うという状況が続いています。もちろんこの点は、批判の的を絞れなかった反対派も責任を免れません。
基本的な情報として、大阪都構想は、3つの側面(「顔」)から構成されます(東京の都区制度と同じ)。
@政令指定都市である大阪市と堺市を廃止する
A2つの市の重要な権限・施設を、府=都に集権化する
B2つの市の基礎的な権限・施設等を、特別区に分権化する
今回の選挙を観察していると、橋下派がBを一方的に宣伝して@Aを隠し【注】、反対派やマスコミも@Aにあまり触れません。実際、話をすると、@Aを知らない人は、結構多くいます。多くの有権者は、都構想のプラス面とイメージだけで投票したと推測できます。
また、大阪都にしないと進まない成長戦略は少ない(ムダな関空アクセス地下鉄、カジノくらい)ことや、巨大都市圏で大学、図書館等多くの府市の「二重行政」には十分ニーズがありむしろ便利なことも、市民は知らされていません。
したがって、今回の選挙結果で、「大阪都」という3文字の言葉は承認されても、その方向性や内容まで承認されたとは、決して言えません。ただし、都構想の検討を本格化することへの承認が得られたとは、言ってよいでしょう。
(3)上のような偏った情報や、橋下氏のタレント性、同氏の反対者(のうち公務員、議員、倉田氏支持の市長)に対するたびたびの威嚇にもかかわらず、反対派も4割強の得票を獲得しました。「民意」は2つあったというべきで、今後、大阪都という特定イシューに絞った住民投票等で、逆転する可能性も十分あります。
事情を知る地方自治の研究者・専門家の間では、大阪市・堺市の廃止構想への賛成はほとんどなく、反対が多いことも、参考にしていただきたいと思います。
しかし、維新の会は、コンスタントに5〜6割の集票力を持つことを示したので、今後、議員や府下の市長は選挙で「刺客」を立てられることを考えると、全面的な批判はしにくくなるでしょう。民主主義にとっては異常事態ですが、これは橋下氏の責任という以上に、批判的情報を控えるマスコミと、無批判的に大阪都と維新の会に票を入れる大阪人の責任です。とはいえ、議論の可能性はまだ十分残っています。
(4)今後の政治過程としては、4月、11月の選挙で敗れた民主、自民が、勢力維持(議会リコール回避)を優先し、都構想反対を弱めるのはやむをえないでしょう。
その際、民主、自民、公明、共産などが都構想の協議に入って、代わりにこれまでの都構想の説明回避を改善するような注文をつけることが期待されます。とくに上述の一方的で偏った情報の流れを改善できなければ、有権者が大阪都に関する最終決定にのぞむ準備ができません。
議会(の特別委員会など)や行政レベルで確認し、市民に広報していただきたい点は、つぎのとおりです。
・大阪市、堺市が廃止されること(おそらく地図からも消える)。
・自分のまとまった自治体機構(政策エンジン)と自己決定・責任を持たない都市は、海外にもなく、衰退する可能性もある。
・2つの市の重要権限・施設は、府=都に移って住民から遠くなる。大阪や堺の街の都市計画は、都庁で決められることになる。
・海外の大都市制度では、広域自治体と中心都市の「市」の二層構造が多い。
・大阪都でしかできない成長戦略とは何か?
・需要のある良い二重行政も多い中で、ムダな二重行政とは何か?
・大阪市、堺市の「スケールメリット」と優秀な専門家組織が分割されることによる非効率。
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【注】選管発行の「選挙公報」を見ると、市長選挙の橋下候補は、「One Osaka!二重行政を抜本的に解消」「強い「大阪都」の実現」としか書かなかった。知事選挙の松井候補は「大阪都構想を実現します。大阪都に広域行政を一元化。二重行政を解消・・・危機管理体制を一元化・・・」としか書かない。この説明から、大阪都になれば大阪・堺市が廃止され、重要権限・大型施設が都に吸い上げられ、都市計画が地元で決められなくなり、知事に権力が過度に集中する事実を読み取った有権者は、どれくらいいるだろうか。
大阪都構想とは――橋下知事の構想を図示する
村上 弘
【現在】 【大阪都構想】 
【注】大阪都構想の中身の全体像を、できるだけ客観的・中立的に示そうとした図です。賛成派も反対派も、有権者の人々も、構想の中身については、共通の認識を持てるようになるべきだと考えて作りました。
参考にしたのは、『大阪維新の会マニフェスト』(2011年春)や、東京都の現行の制度などです。
詳しくは、村上「大阪都の基礎研究」、「大阪都構想―メリット、デメリット、論点を考える」などを、このHP等で読んでください。
少し解説を加えます。
- 大阪都構想には、府が大阪市・堺市を吸収合併するという「集権化」の面と、大阪市・堺市の基礎的な仕事が特別区に移って住民に近くなるという「分権化」の面とが、ともにある。大阪市、堺市の住民は、たしかに区長と区議会を選べるようになるが、代わりに市長と市議会を選ぶ権利を失うことも忘れてはならない。
- 特別区には中核市並みの権限が与えられるとされるが、中核市並みといっても、指定都市に比べるとかなり弱い。中核市にとくに認められている権限は福祉や保健衛生が中心で、都市計画決定や教育については限られている(中核市市長会HPを参照)。それに加えて、大阪市や堺市が全市を対象に持つ大型の施設・資産は、小さな特別区では引き受けられず、大阪都に吸い上げられる可能性が高い。
- 先進国の大都市圏では、広域の州・県と、強い大都市自治体(多くは人口100〜300万人の市)というように、2段階の自治体を置くのが普通で、パリ、ミラノ、フランクフルト、サンフランシスコ、ソウル、台北などすべてそうなっている。つまり、東京都や大阪都構想のように、広域自治体に重要権限等を一元化して内部の大都市自治体を廃止する制度は、国際的にはレアで異例のものだ。もちろん、橋下知事など推進派は、この例外的な制度こそが大阪を強くする先進的な改革であると訴えている。
(『立命館法学』335号,2011年6月)
大阪都構想
-メリット,デメリット,論点を考える−
村上 弘
はじめに p.2(p.558)
■ 総論
1.大阪都構想を考えるときのポイントは何ですか。 p.5(p.561)
2.府民への世論調査では大阪都構想への賛成が反対を上回ります。どう対応するべきでしょうか。 p.6(p.562)
3.橋下知事は,大阪都は住民に近い特別区への分権だと主張しますが,府への集権化だという批判もあります。 p.8(p.564)
4.大阪都構想では,大阪市と堺市は廃止されるのですか。【もっとも基礎的な質問】 p.10(p.566)
5.大阪都になると,大阪市域と堺市域の地位低下が心配です。政令指定都市としての大阪市と堺市の存在意義は,貴重なのではないですか。 p.12(p.568)
6.大阪都のデメリットについてマスコミの報道が少ないのは,デメリットが少ないからですか。p.14(p.570)
7.橋下知事はなぜ,これほど大阪都構想に熱心なのでしょう。 p.16(p.572)
8.大阪都に反対するだけでなく,対案を示すべきです。 p.17(p.573)
9.大阪府と大阪市の協力は理想であっても,ムリではないですか。 p.20(p.576)
■ 各論
10.大阪都構想がモデルにする東京都のような制度は,外国にはありますか。 p.22(p.578)
11.指定都市(政令市,政令指定都市)制度には,「制度疲労」が起こっているという批判もあります。 p.24(p.580)
12.大阪の衰退は深刻なので,大阪市の廃止という非常手段もやむをえないのではないですか。 p.25(p.581)
13.大阪の競争力を回復させるためには,府と大阪市を一元化するべきではないでしょうか。 p.27(p.583)
14.大阪市の人口や面積規模は,世界の主要都市と比べて見劣りするのではないですか。 p.29(p.585)
15.二重行政の解消や効率化のためにも,大阪都は役立つのではないでしょうか。 p.30(p.586)
16.大阪市の行政が非効率なので,これを廃止解体するのだと言う主張があります。 p.31(p.587)
17.大阪維新の会の宣伝文書からは,何が読み取れますか。 p.34(p.590)
18.2011年1月の維新の会マニフェストは,大阪・堺市を廃止したあとに設ける特別区を中核市並みにすると述べています。大阪市や堺市の自治に配慮したのでしょうか。 p.36(p.592)
19.大阪都論争の展望をどう見ますか? 対抗するためのスローガンは? p.37(p.593)
■ 資料
A 指定都市制度と都区制度の比較評価 p.40(p.596)
B 関西空港へのアクセス鉄道(JR)の高速化の可能性 p.42(p.598)
C 「二重行政」についての考え方――「良い二重行政」と「悪い二重行政」の分類方法 p.43(p.599)
D 東京都区制度と「大阪府+大阪市」とで財政効率を比較する p.43(p.599)
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